Aさんが遠い散歩に出かけた日

それは2月に入って特に冷えた朝。
大家さんのご主人が病院でお亡くなりになったと連絡が入った。
享年89歳とのこと。

思えばこの家を下見に来たときに、大家さんより先に出会っていたご主人。
よそから来た私を迎えてくれたあの笑顔がなかったら、
この家とのご縁も始まらなかったかもしれない。
ご挨拶だけさせていただこうと、お通夜に参加した。

お通夜の席では、会場で用意された食事に加え、
大家さんがお手製のビーフンをふるまってくださった。
ご主人の好物、やっぱり最期も台湾。

ハンチング帽とショートパンツ、杖を片手に散歩にでかけていたご主人。
 いつもおしゃれでしたね
 こだわりがあったのよね
 毎日お出かけしてお元気だったわよね
 ほんとにね
近所の方とそんな話をしながら食べたビーフンは、特別な味に感じた。

病院では一ヶ月以上眠ったままだったご主人。
私と一ヶ月違いで、今頃はきっと台湾あたりだろう。
懐かしき総督府あたりを散歩しながら。




鳳梨酥からよもやま話の続きです。